1位 サイダーハウス・ルール 2位 バニラ・フォグ 3位 リプレイスメント 4位 天国までの百マイル 5位 ナトゥ 踊る!ニンジャ伝説 6位 DEUCE BIGALOW 7位 恋するための3つのルール 8位 マーシャル・ロー 9位 顔 10位 御法度 女優賞 サラ=ミシェル・ゲラー(バニラ・フォグ) 男優賞 イアン・ハート(クローサー・ユー・ゲット、ことの終わり) ヨーロッパ勢が壊滅。アメリカ映画の圧勝とは、自分でも信じがたい結果となった。もっとも、1位『サイダーハウス・ルール』のラッセ・ハルストレムはスウェーデン出身であり、純粋にアメリカという国家の勝利ではなかった点が救いだろうか。戦前にハリウッドが形成されていく過程を見ても、ヨーロッパから優れた才能が移入されたことが、その繁栄をもたらしたわけであり、それが今日、多少形を変えて存続していると見なしてもよいだろう。 『バニラ・フォグ』のマーク・ターロフ、『リプレイスメント』のハワード・ドゥイッチらが、いかなる経歴の持ち主かは、今のところ調べがついていないのだが、もはや甦ることのないハリウッドを志向して、無謀なまでの回帰を試みたマーク・ターロフは、ラッセ・ハルストレム以上にアメリカ映画(ハリウッド映画ではない、念のため)の現在を体現しているし、ハワード・ドゥイッチが『リプレイスメント』で見せたフランソワ・トリュフォーへのレクイエムは、アメリカ―ヨーロッパといった、範疇など一笑に付すかのように超越してしまっている。 『サイダーハウス・ルール』に続くこれらの映画は、アメリカ―ヨーロッパなどといった区分は、意味をなさないものとなっている現況を示しており、それゆえのアメリカ映画大勝利という結果だったのかも知れない。 日本映画の躍進ぶりは驚異的だ。1998年に、『ラブレター』やHANA-BI』が1位へと迫り、世界のトップレベルに浮上していたものの、1999年には1本も入らず、その波が懸念されてはいた。突如逆転するかのように4本が送り込まれたのだから、その実力は確実なものとなったのではないか。 『天国までの百マイル』は、瀕死の映画から決して目をそむけない真摯な姿勢と、全篇に自然光を使用する試みが幸福に交錯した傑作であり、4位という位置はむべなるかな、であるが、それ以上に今日的な意味を持つのが、5位の『ナトゥ 踊る!ニンジャ伝説』である。この映画と同じ日に公開された『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、ある意味で革新的な作品ともいえる。しかし、それは映画とは別の文脈を導入することによって映画の変容を求めた行為に過ぎない。 それに対し、『ナトゥ 踊る!ニンジャ伝説』は、徹底して反動的な映画である。ミュージカルという、映画の一手法に何の疑問をはさむことなく、愚直にそれを履行しようとする。重要なのは、ストーリーという時間軸 の中に、歌と踊りが突然入り込むことへ疑問を呈することではなく、歌と踊りそのものの力でそんな疑問をはさませない強引さなのである。そんな無茶が罷り通ってしまい、それに何の疑問も持たずに身を委ねることが、映画の幸福に他ならない。 時代は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の「新しさ」を歓迎するのかも知れないが、映画が歓迎するのは、決定的に『ナトゥ 踊る!ニンジャ伝説』の「愚直さ」である。別次元の価値を付加することで映画とは別のものを提示して問題点をすりかえるのではなく、流れから逃げずにその中で愚直に生き続ける厳しさを知る作り手だけが、映画の幸福へと人々を導くことができる。2000年のベストテンは、そんな主張をしているかのようだ。 編集部注・6位にランクインされている「DEUCE BIGALOW」は現在のところ日本未公開映画。監督はアダム・サンドラが主演した「ビック・ダディ」のデニス・デューガン。冴えない配水管工が凄腕ジゴロの留守番を引き受けることから始まる小品な恋愛コメディーですが、途中のマトリクスのパロディーなども含め作品としての完成度は高く、最後は観るもの全てを幸せな気持ちにさせる快作。日本公開またはビデオ化が待たれる一作。ちなみに野沢氏と私はタイで観ました。もちろん一緒に観た訳ではありませんよ。