格闘伝説BUDO-RA 第3号 

 
BUDO-RA 第3号
 
第3号 2003年3月22日発売

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■徒手空拳に生きる武器術の身体操作

極真館 古武術講習会

期日 3月2日
場所 極真館総本部道場
主催 極真館技術委員会

 盧山初雄氏が館長を務める極真館が、古武術と型の講習会を開催した。伝統的な空手の動作は、武器術から作られたものであり、武器術の体得は、徒手空拳の空手道にも生きてくる。
 古武術に造詣の深い岡崎寛人副本部長が指導に当たり、午前は武器の指導、午後には型の指導が行われた。ここでは、剣と棒の基本を中心に紹介していこう。


午前の古武術講習会には60余名、午後の型講習会には、150名を超える参加者が集まった(1)。

講習に先立ち、盧山初雄館長からの訓示が行われる(2)。
「午前の古武術講習会は60名、午後の型講習会には150名以上という、私たちの想像していた数をはるかに上回る参加者が、遠方からも集まっていただき、とても嬉しく思います。
 空手とは、徒手空拳で行われる武道です。しかし、空手には元々、武器術が存在していることを忘れてはいけません。また中国の各拳法も、ほとんどが武器術を行っております。
 澤井健一先生は、中国で王郷斎先生に学びましたが、王郷斎先生を相手にして、何もできなかった。そこで、日本で剣道や居合を学んだ経験のある澤井先生が、竹刀を持って王郷斎先生に打ち込んでいったところ、跳ね飛ばされてしまったそうです。
 王郷斎先生は、どんな武器でも手足の延長に過ぎない、ということをおっしゃいました。
 武器を動かすのは、あくまでも肉体です。武器術を通じ、動きの根本を理解することによって、徒手空拳の空手に必ず役立ちます。
 大山道場時代、師範代を務めていたことのある黒崎健時先生が、最近の極真空手は、空手エアロビクスになっている、と危惧していました。実戦から始まった空手が、大会が行われ、ルールが定められることによって、顔面の攻撃を無視した押し合いへし合いとなり、本来の武術から離れてしまったものとなっています。
 私たち極真館は、それに歯止めをかけ、空手本来の精神を追求していきたい。
 まずは武器に慣れることを心がけてください。武器に慣れていないと、相手が刀や匕首を出したら、びっくりして何もできなくなってしまいます。
 自分が武器を学んでいれば、相手に武器を持たれたときの気構えができます。
 棒を扱えない人は、棒を受けることができません。突き蹴りができない人間が、突き蹴りを受けることができないのと同じです。
 武器に対する原理を学び、ぜひ空手に役立ててほしいと思います」

やはり最初は正拳中段突きから(3)。

武器の指導は、剣から入る。
岡崎副本部長から、剣の説明が行われた(4)。
「沖縄の空手は、実は薩摩の剣術から作られました。剣を学ぶことによって、空手の動きを深く知ることができます。
 棒を習いたい人も多いでしょうが、棒にしても、サイにしても、それらは対剣の武器であり、剣に対抗するために作られたものです。
 棒やサイを学ぶためには、相手が日本刀の使い手でないと、対人練習ができません。
 全員が剣の扱いをできることで、練習が可能になります。
 また、剣の間合いは、空手の基本の間合いです。剣を振ってくる相手に飛び込んでいくことを前提として、型は作られています。
 剣に対しては、少しの無駄も許されません。刃物を一発もらったら、そこで終わりですから。相手がすでに一撃必殺の武器を持っている。それに対する状況を学んでいけば、空手修行もより本質的なものを目指せるようになっていきます」

剣の持ち方
柄頭に左の掌底を当て(5)、小指から握り(6)、人差し指は触れる程度に握ります(7)。左手一本で振れるように(8)。右手は添える程度です(9)。左手が8、9割、右手が1、2割の配分です。

上下素振り
剣を背中に当てるまで振りかぶり(10)、まっすぐ上に上げ(11)、肘を曲げずに(12)、膝くらいの高さまで振り下ろします(13)。
上下素振りは、悪い癖を直すには、いちばんの運動です。大きな動作で、できるだけ遠くを切るようにします。息をゆっくり吸って上げ、ゆっくり吐いて下ろします。
腰を落とした状態(居合腰ともいいます)で上下素振りを行います(1415)。剣は床と水平の高さまで切り下ろします。

切り下ろし
結び立ちで振りかぶり(16)、踏み込んで切り下ろします(17)。
体が落ちるのと、剣が落ちるのが同時になるようにします。踏み込みの際、気、剣、体が一致します。頭から胴体を縦割りに切るイメージです。右と左を交互に行います。

袈裟がけ切り下ろし
八相に構え(18)、踏み込んで袈裟がけに切り下ろします(1920)。首からわきの下へ一刀で切るイメージです。

切り落としの型攻め側は、八相に構え、受け側は正眼に構えます(21)。正眼に構えた剣の中央部をすり込むように打ち(2223)、歩を進めて切っ先を相手の目に向けます(24)。互いに正眼となり(25)、今度は、受け手の方が攻めていきます(262728)。
太刀筋と間合いを意識し、徐々に力強く行うようにしていきます。

棒の基本
棒の打ち下ろしです(293031)。打ち下ろす角度は斜めから(32)、棒の先端が脳天に当たるように打ち込みます(33)。素振りでは、目の高さで止めるようにします。
棒を打った形は、空手の前屈立ち中段突きと同じ形になります(34)。

棒の回し打ち
右手を下にした構えから(35)、円を描くように振りかぶり(36)、打ち下ろします(37)。

棒の突き
突いたときの立ち方は、このように変形の四股立ちとなります(38)。
腰の位置に棒を構え(39)、少し引いて突き込みます(40)。背筋を伸ばし、小指側をしっかり握るようにしてください。

棒の対人(相対)稽古
互いに構え(41)、写真右側の人から踏み込んで下段を攻撃し、左側の人が下がって受けます(42)。さらに一歩踏み込んで、上段を打ちます(4344)。攻守交代し、左側の人が攻撃します(45)。腰をしっかり落とし、頭が上下しないように気をつけてください。まずは、間合いをつかむことを目標とします。

型講習会

午前の古武術講習会に引き続き、午後は型講習会が行われた。少年部から一般部まで、細かくグループ分けし、それぞれ型の徹底チェックがなされた。


盧山初雄館長の講評

 これまでにも、武器の指導をしてほしい、という希望は多くあったのですが、実際には他の道場へ行って学ぶしかないのが実状でした。
 極真館となって、初めてこうした指導を実現することができました。極真館は、外から見ると、「人材の宝庫」だ、というお言葉をいただきました。空手を真剣に学ぶ者の集まりであり、その情熱は、これ以上ものはありません。皆さんも、自信を持って稽古に励んでください。
 武器術を学ぶ過程で、武器を持った相手に対応する心構えや技なども是非学ぶ必要があるかと思います。
 剣を構えられたところへ飛び込むのは、死にに行くに等しい。しかし、そこに入れる訓練をし、間合いというものを学んでほしい。
 敵に対することが術であれば、逃げることもまた戦術です。
 敵に向かう勇気を養い、そして逃げる勇気も養えることが大切です。

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