格闘伝説BUDO-RA 第11号 

 
BUDO-RA 第11号
 
第11号 2003年11月26日発売

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カラーグラフ

必倒不敗 富樫宜資
最強の空手理論

ニコラス・ペタス 緻密な防御からの攻撃

ブルース・リー不敗のセオリー

特集
富樫宜資 受即攻への道

最強の格闘技・空手を完成させた極限の日々
富樫宜資 最強の空手理論

山田編集長の今月の格闘技学

PDS誌上ワークショップ 犯罪から身を守る最先端護身術 指導 毛利元貞

ニコラス・ペタス 守りから入る空手の神髄

サムゴー・ギャットモンテープ 最強の左ミドルを学べ!

サバキチャレンジJAPAN史上初 大阪支部が全階級を完全制覇

達人に訊け! 強くなるQ&A 大石代悟/増田章/森拳成

真剣との出合いから生まれる新たな世界 野沢靖尚

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新空手道交流大会 リポート=山田英司

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あらゆる間合を制する武器術 鎖鎌に挑戦

敗戦からスタートする新空手入門 林悦道

正しいケアなら強くなる カイロプラクティックが教えるパート別治療法 手首

真樹日佐夫千夜一夜

功朗法 現代を生き抜くための護身術 第七回

鉄人倉本成春の超人追求の空手

BUDO-RA 格闘RA

表紙写真 富樫宜資(撮影=柳生東世)

 
TRY 
■ニコラス先輩に訊け!
大山倍達最後の内弟子が伝える空手遺産

指導 ニコラス・ペタス
演武協力 渡辺真吾

ニコラス先輩からのメッセージ

大山総裁との日々

 1991年に大山倍達総裁の内弟子になってから、3年間。1994年に大山総裁が亡くなるまで、総裁の指導を受けました。
 総裁の指導は週4回です。木曜日の内弟子稽古、金曜日の黒帯研究会(オビケン)、土曜日の一般向け補習稽古、そして日曜のオビケンです。それに、朝礼では毎朝、訓話を聞かせていただきました。
 総裁は、基本稽古を皆と一緒に行い、移動になってからは、神前のところに座り、指導員に指導させました。このときに、指導の仕方をいろいろと教えていただきました。
 総裁の攻撃を受けた、というわけではないのですが、左手の使い方が強烈でしたね。
しゃべっているとき、左手のアクションが起きるんです。こんな拳で殴られたら、おしまいだ、と本気で思いました。
 自分たちは、人と話すとき、目を見ますが、総裁の話を聞くとき、はたして目を見ていいのやら、悪いのやら、しばらく悩みました。目を見ていると、なんか起こられているような気にもなりました。
 大山総裁は、組手の指導では、あまり長くやらせませんでした。5秒くらい。一瞬で終わる感じです。長くても20秒くらいでしたね。どうしてこんなに短いのか? 最初は理解できませんでした。
 組手は短時間で集中してやるものなのだ、と考えて取り組むようになりました。ケンカなら、10秒くらいで決まってしまいますから。30秒もかかるのなら、逃げた方がいい、と総裁は話してしましたよ(笑)。警察に捕まってしまうから(笑)。
 総裁は、特にアドバイスはされないんです。相手の動きを止めるために、足を踏んで横から打ちなさい、と指導されたことはありました。皆、足を踏んでた(笑)。
 足を踏むのは、実際には難しいですよ。組手で無意識に踏んでしまうことはあります。確かに足を踏まれるとバランスが崩れますが、難しい。
 総裁との夕食会が、週1回、土曜日にありました。総裁は毎週来られました。
 メニューは、鶏の水炊き、とんかつ、サラダの大盛り、アジの開き、そしてご飯をどんぶりにいっぱい。これを3杯食べまさせられましたね。それに、総裁は、自分のとんかつやサラダを分けてくれるんです。
 最初はつらかったですが、だんだん楽しくなりました。総裁のとんかつは、肉の質が違うんですよ(笑)。おいしかったですね。自分は内弟子になったとき、体重が72キロでしたが、3年間で102キロまで増やしました。

先輩の立場で大山総裁の空手を伝えたい

 日本に来たら、細かいことまで教えてもらえるのだろうと期待していたのですが、基本と移動と型ばかりを延々と繰り返すだけで、驚きました。
 しばらく経つと、その意味が理解できるようになってきました。空手の先生は、基本しか教えないのだ、と。基本、つまり道具の作り方と使い方です。そこから強くなっていくのは、本人次第なんです。
 これがプロの世界で、金がからみ、トレーナーについて練習するとなると、ちがってきます。トレーナーは、徹底して細かいところまで指導してくれます。短い期間で効果が上げられる。
 しかし、試合に出なくなったら、そこでおしまいです。何をやったのか? 金を稼いだ。それだけしか残らない。金を稼げればいいですが、稼げなかった人もいる。
 基本を繰り返していき、その技を組み立てる。これは自分で工夫しなければいけません。そこに先輩の経験が生きてきます。先輩はいい経験も悪い経験も積んでいる。
その経験を参考にさせてもらって、自分の組手を作っていく。そこの空手の楽しさがあるのだと思います。
 現在、道場では、空手とキックボクシングを教えています。
 空手は、極真時代に大山倍達総裁から学んだことに、自分のやり方を少しアレンジして教えています。厳しく教えますよ。こうしろ! と形を作らせる。しかし、黒帯になったら、もう言いません。自分で作っていく。そこから本当の空手が始まるのです。
 大会用の練習ばかりしていると、空手の細かい技に目が向けられなくなって、限られたものになってしまう。顔面パンチがないからといって、手を下げたまま突っ込んでいたら、他ならやられています。空手でもキックでも通用する基本、立ち方、コンビネーションなどを指導します。
 大山総裁は、つかまれたら、懐に入ってこられたら、といったさまざまな状況を想定していました。もちろん、つかまれる前に倒してしまえ、ということはあります。
 しかし、現実にはそれだけじゃない。ディスコのような、人が多くいる中で、いきなりつかまれたら、どうするか?
 昔からある孤拳や貫手のような技や、極め技なども含め、総合的に一つの武道として幅広く指導するようにしています。
 空手とキックはまったく違う練習になります。
 キックは、早く結果が出ることが望まれますから、雰囲気を変えて、音楽を流したりして、少しフレンドリーに練習します。フレンドリーな中で、少し厳しく。
 キックはいい運動にはなるのですが、それを10年20年続けられるかというと、難しい。空手をベースにしたキックにしたい。ですから、キックのクラスでも、最初に全員が並んで礼をして始まり、最後も礼で終わります。
 キックも空手も、自分を守ることを、いちばん先に教えます。誰でも人を倒したいと思うのですが、まずは自分を守ってからです。自分を守ることの大切さを学んでもらいたいですね。

ニコラス・ペタス
1973年、デンマーク出身。14歳で極真空手を始める。
1991年、来日し、極真会館総本部に入門、内弟子となる。
1995年、ヨーロッパ選手権重量級優勝。
1995年、第6回全世界空手道選手権大会第五位。
1997年、全世界ウェイト制空手道選手権大会重量級第3位。
1999年、第10回全日本新空手道選手権大会重量級優勝。
1999年、第7回全世界空手道選手権大会第五位。
2001年、K-1JAPANGP優勝。
現在、スピリット・オブ・サムライ ニコラス・ペタス道場を主宰。タレントとしても活躍中。

 
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